ドクターよりドクターより

「歯っとする話」をお届けします。

子どもの指しゃぶりは年齢に応じた対応が必要です。
早めに小児歯科医にご相談ください。

指しゃぶりのイラスト(女の子)

乳幼児期の歯並びやかみ合わせの異常は、指しゃぶりなどの癖が原因のことが多い。
東京都葛飾区の母親(45)の長女(6)は、歩けるころになっても、眠い時はすぐ、指をしゃぶり始めるのが癖だった。
寝入った後にそっと指をはずしても、すぐに指が口に入ってしまう。

4歳になる直前の2010年7月、同区の歯科クリニックを受診。
院長から、上下の前歯に隙間が開く「開咬(かいこう)」と診断された。

隙間に舌を入れるようになると、発音にも支障が出る。
前歯が指で裏から押されると、出っ歯になることもある。
開咬や出っ歯の場合、3~4歳までに指しゃぶりをやめ、舌を突き出す、口が開き放しになるなどの癖を練習して直せば、治ることがよくある。

開咬の原因になる癖(舌を噛む)のイラスト

院長は
「無理にやめさせず、まず歯には好ましくない癖だと教えて、おおらかに接して下さい。
もう、お話をすればわかる年齢です。」
とアドバイス。

母親は、早速、長女にこう話してみた。
「指を入れてると、きれいな歯じゃなくなるよ。それでもいいの?」

長女は少し考えた後、「嫌だ」とはっきり答え、「やめる」と約束した。

それから、朝起きた時に、指しゃぶりがなかったら、「指が入ってないね」と忘れずに褒めた。
日中は、唇を閉じる練習もやった。

女の子の頭をなでるお母さんのイラスト

まず、大きめのボタンに糸を通し、前歯と唇の間に挟んでもらう。
母親が糸を引っ張ると、長女は、ボタンをはずすまいと、唇をぎゅっと閉じる。
遊び感党で続けた。徐々に指しゃぶりは減り、5歳前にはなくなった。
歯並びも治った。

指しゃぶりは成長するにつれ自然に減る。
幼児期の指しゃぶりには緊張や不安を解消する意味もある。
小児科医と小児歯科医で組織する委員会では、3歳ごろまでは特に禁止する必要はない、としている。

指しゃぶりで吸う力が強いと、上あごが狭くなり、奥歯のかみ合わせが左右で異なる「交叉咬合」になるともある。
自然に治ることは少なく、きちんとかめなくなり、顔のゆがみにもつながる。
矯正が必要なことも少なくない。

不正咬合(交叉咬合)のイラスト

院長は、
「子どもの指しゃぶりは年齢に応じた対応が必要。早めに小児歯科医に相談してほしい。」
と話している。

問診のイラスト(女医・女性患者)

【出典】読売新聞 2012年9月12日

小児歯科